約100日間におよぶ船上生活のはじまり

まずは最初の寄港地オークランドを目指して2週間

前稿(第7回)では「巡航見本市さくら丸」に乗船する経緯につき述べましたが、今回からは約100日間の船上生活および巡航12港でのさまざまな体験を思い出すままに列挙することにいたします。40年以上経った今日ではいささかおぼろげな部分もございますが、その辺は何卒お許し願います。

竹芝桟橋から最初の寄港地ニュージーランドのオークランドまで約2週間、文字通り洋々たる海原を一気に南下しました。この間、我々各企業・団体のアテンド要員は、船上見本市開催準備のため自社ブース(小間)設営や配布資料類の整理に忙殺される日々を過ごしました。

ときには人間関係の複雑さも

我々には2人1組で1キャビンが割り当てられ、私は図らずも某輸出組合の高齢職員とルームメイトとなりました。最初の10日ほどは初対面、お互いに遠慮もあり、まずまず平穏かつ円満な明け暮れでしたが、船内のブースも隣同士、ほぼ終日顔を突き合わせているわけなので、日にちが経つにつれだんだんと相手のアラが気になってくるものです。

「いびきがうるさい」「食事の行儀が悪い」「私物の整理整頓がなっていない」などなど、アルコールが入ると些細なことでも文句を言い合う始末です。航海の後半では同じキャビンで起居しながらほとんど口もきかない間柄になってしまいました。人間関係の複雑さを身に染みて実感した次第です。

蛇足ながら、全航程を終了し下船後、このルームメイトとは、ご本人が他界するまで時折再会して回顧談にふけったのも懐かしい想い出です。

1958年三井物産入社:星野 仁一