異国だからこそ生じる違いや失敗談

国によって大きく変わるスピード感

「人間よりも羊のほうが多い国」などと称されるニュージーランド。我が「さくら丸」は、北島のオークランドとウエリントンに寄港し船上見本市を開催。10月初旬、南半球は日本とは逆の季節ゆえ万緑薫風の景観を楽しみました。

スピード重視の日本とは異なり、この国は万事が「ゆっくりペース」です。街行く人達も決して駆け出したりはせず、悠然と足を運ぶ風情が印象的でした。見本市来場者も退船時刻など時間的制約はあまりお構いなし。極めてマイペースでの参観ぶりには、アテンダントとして若干イライラさせられたこともありました。

我々商社の場合、大勢の現地支店勤務のローカルスタッフ(現地人社員)が応援のため来船し、ブースでの来客対応を含めてフル稼働してくれましたので大助かり。英語が不得意な私にはまさに「干天の慈雨」でした。その後、各港を巡航し各地各店のローカルスタッフと見本市を通じて友情を育めたことは、極めて有意義な想い出になりました。

思わぬ失敗談も

ニュージーランドでの失敗談をひとつご披露しましょう。「さくら丸」停泊中、現地の某名士からご自宅に招待されました。夜9時とのご指定でしたので、「この国の夕食はずいぶんと遅くにスタートするものだ」とは思いましたが、せっかくのお誘いゆえ当夜は船内での夕食はパスしてお迎えの車で先方宅へ伺いました。

某名士夫妻は大歓迎してくれ、「乾杯!乾杯!」の連続。空きっ腹にしこたま強い洋酒をのまされだいぶ酔っぱらってしまいましたが、一向に「夕食」が用意される気配すらなく12時近くにようやくおひらき。泥酔状態で帰船する羽目となりました。

後日、現地通による説明では、ニュージーランドで先方宅に夜分招待された際には、「食事はなし、ドリンクのみ」のケースが度々あるのであらかじめよく確かめてから出向くべしとのことでした。

1958年三井物産入社:星野 仁一