商社の仕事で得た半世紀持ち続けている心構えとは!?

今回は商社での日常業務を処理する際の基本的な心構えについて触れてみたいと思います。

入社式では社長はじめ幹部の方々から、我々新入社員に対していろいろと有益な訓示を賜りました。残念ながら、その内容についてはほとんど記憶しておりません。ただし、その中で人事担当の某役員が述べた「今日の疲れを明日に持ち越さないように」との一節が半世紀以上たった現在でも、ことあるごとに私の脳裏によみがえってまいります。至極簡単、かつ常識的な表現ですがハードワークの日々を強いられる商社マンにとっては心身の健康保持のためには大切な心掛けです。優秀な同期の仲間達が健康を損ねた例をしみじみと想起しております。

私自身が職場での先輩や上司から度々指導された事柄は、その後の商社マン生活の上でいずれも貴重な教訓となりました。しかしながら、今日回顧してみますとそれらの教訓の数々には一人の商社マンに限らず、社会人全般に対して広く共通するニュアンスが含まれていることを実感します。

ご参考までに具体的な事例を挙げてみましょう。

「速やかな応答をすること」

私が実務担当者の頃、海外への通信手段が従来の電信やレターに替わり、ようやくファクスやテレックスが定着し始めました。ビジネス面でのコミュニケーションが一段とスピードアップされたのです。商社の営業部門には国内外から日々あまたの来信が届きます。我々はこれらの来信には速やかな応答をするように教育されました。もし、即答が不能な場合には「お問い合わせの件、承りました。可及的速やかにお返事いたしますので暫時お待ち願います」旨の「繋ぎの返信」を励行したかどうか厳しくチェックされたものです。従って、来信に応答せぬまま放置することなどは論外でした。このような習慣から、私は現在でも頂戴したお手紙は翌日に必ずお返事を差し上げるよう心掛けております。

「御礼やお詫びは早目にすること」

社内外の方々から公私共にいろいろとお世話になることがありました。忙しさに取り紛れて「御礼言上」がついつい遅れてしまい気まずい思いをしたものです。「はがき」でもよいから早目に礼状を出すこと。現在はメールという便利な手段がありますので大いに活用されるようお勧めします。 一方、先方にご迷惑をかけた場合のお詫びは即刻が肝要。お詫びのタイミングが遅れるとさらに事態が悪化する恐れがありますので要注意です。電話やメールで済まさず、できれば先方へ直接お詫びに出向くのがよろしかろうと思います。ちなみに、私は顧客開拓で往訪した先には、その日のうちに御礼のメール発信を現在も励行しております。

1958年三井物産入社 :星野 仁一