自ら申告した配転希望

意外な展開となった配転希望

人事部への配転を希望する旨の「自己申告書」を直属の上司(課長)に提出した翌日、課長に肩を叩かれ別室での個別面談となりました。私の態度はある種の「敵前逃亡」ともみなされかねず、さぞや嫌味たらたらのお小言でも頂戴し「申告」は却下されるのではないかとの懸念もありました。ところが、課長いわく「丁度、人事部から若手を欲しいと言われている。仕事は社内報編集業務だが、やる気はあるか」とのこと。意外でした。

当時、商社業界でも労働組合結成の機運が高まり、当社にも労組が誕生。活発かつ先鋭な活動が目立つようになっていました。労組との直接交渉役たる人事部では、労組対策の一環として「社内融和」を図る趣旨から「社内報」刊行に踏み切った経緯がありました。ところが、問題は「人手」です。人事部内には雑誌編集の経験者などは不在のため、急遽社内各部に対して適任者の推薦を呼びかけておりました。さながら商社マンにとり雑誌編集などは全く異質の仕事で、誰も興味・関心を示さず人事部では対策に苦慮していたところでした。

ちなみに私自身は中学・高校時代に「新聞部」に所属した経験があり、元来、作文や編集には興味がありました。さらにこの頃、当社は同業中堅商社を吸収合併し、営業部門も増強され従来の人手不足も緩和されておりました。このような背景もあって、私の営業部門から人事部への移籍もとんとん拍子に進展、社内報編集担当者の席を確保できた次第です。

社内報編集で得たもの

人事部での社内報編集には約4年間携わりましたが、仕事柄、社内各部・各店とは頻繁に接触せざるを得ず、おのずから「社内的な知名度」も大いにアップしました。本州各地域はもとより北海道から九州に散在する支店や出張所、駐在員事務所などをくまなく歴訪して見聞を広めることができました。

商売開拓には「KNOW HOWよりもKNOW WHO」とのことわざがありますが、社内報編集を通じて社内外に大勢の知己を得たことは私にとって大きな財産となりました。社内報編集が将来への重要なステップとなり、さらに新しい分野に挑戦する機会に恵まれることは幸運でした。

※本記事は匿名とさせていただきます。