2016年秋の働き方改革実現会議の初会合以来、急速に「働き方改革」という言葉が産業界に浸透しました。2018年となり、働き方改革の浸透段階から、成果段階に入ったという企業様も多いかと思います。
一方、働き方改革が生産性向上や従業員とのエンゲージメント強化につながっているかという問いに対して、疑問を持つ企業様も多いのではないでしょうか。では、生産性向上と従業員とのエンゲージメント強化の両面を実現する働き方改革は可能なのか、またどのように推進すればよいのか、これからの働き方改革をテーマにセミナーレポートをお届けします。

< 働き方改革セミナー 講師 >

働き方改革セミナー_講師佐々木氏

佐々木 常夫 氏

何度かの事業改革の実行や3代の社長に仕えた経験から独特の経営観をもち、現在は経営者育成のプログラムの講師などを勤める。
著書『ビッグツリー私は仕事も家族も決してあきらめない』が反響を呼び、2011年にビジネス書最優秀者賞を受賞。

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    [ 経歴 ]

    東京大学経済学部卒業。東レ入社。自閉症の⻑男を含め3人の子どもを持つ。しばしば問題を起こす⻑男の世話に加えて肝臓病を患った妻がうつ病にも罹り20年間の間に43回もの入院、3回の自殺未遂を起こす。育児、家事、介護に追われる中、会社では大阪、東京と6度の転勤をしながら破綻会社の再建やさまざまな事業改革に全力でとり組む。2001年同期トップで取締役就任。2003年東レ経営研究所社⻑就任。2010年(株)佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表。

働き方改革セミナー_講師秋山氏

秋山 ゆかり 氏

戦略・事業開発専門の経営コンサルタントで声楽家。
政策立案と事業開発コンサルティングをしながら、声楽家としてコンサートのプロデュースや演奏を行っている。日経ビジネスオンライン『秋山ゆかりの女性キャリアアップ論』がアクセス数1位になるなど人気の記事を連載中。

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    [ 経歴 ]

    イリノイ州立大学在学中に新規事業を立ち上げ、インターネット・エンジニアのキャリアを重ねる。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の戦略コンサルタント、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長などを歴任。独立後は事業開発やグローバル人材育成を支援。女性活躍推進では、理系女性社員の支援を強みとしている。

<第一部> 佐々木 常夫 氏 これからの働き方とは

ワークライフバランスは「個人と企業が共に成長する」という経営戦略

働き方改革セミナー_佐々木氏

「働き方改革」という言葉が産業界に浸透してきて、さまざまな企業で働き方を変えようとする動きが出てきています。ワークライフバランスという言葉は直訳すると「仕事と生活の調和」という意味です。しかし、単純に仕事は定時で終えて自分の生活を充実しようということではありません。ワークライフバランスというものは、個人と企業がともに成長するという経営戦略のことを表しています。

これまでより早く帰ったとしても、これまでと同じか、もしくはそれ以上の成果を企業に残さなければワークライフバランスではありません。仕事の改革があって初めて実現できる経営戦略がワークライフバランスなのです。
まずは社員の意識を変えるべく、佐々木氏が部下に伝えていた「仕事の進め方の基本10か条」を紹介しました。

仕事の進め方の基本

1

計画主義と重点主義(仕事の計画策定と重要度を評価する/すぐ走り出してはいけない)

2

効率主義(最短コースを選ぶこと/通常の仕事は拙速を尊ぶ)

3

フォローアップの徹底(自らの業務遂行の冷静な評価を行い次のレベルアップにつなげる)

4

結果主義(仕事はそのプロセスでの努力も理解するが、その結果で評価される)

5

シンプル主義(事務処理、管理、制度、資料、会話はシンプルを以って秀とする)

6

整理整頓主義(仕事の迅速性に繋がる)

7

常に上位者の視点(自分より上の立場での発想は仕事の幅と内容を高度化する)

8

自己主張の明確化(しかし他人の意見を良く聴くこと)

9

自己研鑽(向上心は仕事を面白くする)

10

自己中心主義(自分を大切にするということは人を大切にすること)

「良い習慣」とは、才能を超えるものです。
10か条は仕事の進め方の基本であり、タイムマネジメント(生産性向上)の基本です。会社の仕事は雑用が多いため、タイムマネジメントで最も重要なことは「正しいことは何かを掴むこと」であります。社員はみんな制約がありながら働いているため、必要のない会議には出ない、必要のない資料は見ない、必要のない人には会わないなど無駄を省くことによって「断捨離」をし、時間を作る努力も必要です。

働き方改革セミナー_講師佐々木氏

結論、タイムマネジメントは「時間の管理」ではなく「仕事の管理」と言えます。

ワークライフバランスを実現する仕事術

実現する術は多数ありますが、その中から3点を紹介しました。

1.部下力の強化(上司の注文を聞く・上司の強みを活かす・上手なコミュニケーション)

会社は「制度より風土、風土より上司」です。上司との付き合い方は最重要課題と言えます。上司は自分の評価や異動先を決定する権利を持つ人です。自分が自分の仕事をやりやすくするために、上手に付き合う必要があります。
そして、働き方改革には管理職の働き方がとても重要になってきます。管理職の役割は部下の感覚やスキルを育てること、そしてチームとして成果を上げることです。佐々木氏はこれまでに、管理職でそのミッションを遂げられている人はほとんど見たことがないそうです。ではどうするか、部下が「部下力」をつけるしかありません。「部下力」とは部下が管理職を育てるということです。自ら上司の注文を聞きにいき、自分の仕事は自分で計画を立てて上司とコミュニケーションをとることで、無駄な作業を省いていくことが改革につながります。

2.プアなイノベーションより優れたイミテーション

企業の仕事は同じことの繰り返しになっていることが多くあります。社内の誰かがどこかで同じことをやっている可能性が高いということです。自分の頭を使うより先に、情報を整理して先輩の賢い知能を盗みましょう。優れたイミテーションを繰り返していると、いつかイノベーションにつながります。

3.ビジネスは予測のゲーム 常に予測しフォローアップ

佐々木氏は、部下にはいつも「ビジネスは予測のゲーム」であると繰り返し伝えていました。次に何が起こるかを常に予想して、先手で行動すること。そもそも「不測の事態」と思うこと自体が間違いです。常にあらゆるケースを予測して、予測の精度を高めるよう努める必要があります。

「どういう風に生きたいのか、どういう働き方をしたいのか」の実現には、決意と覚悟が必要ということです。働き方=生き方です。佐々木氏は毎年、その年の目標を自分に問うようにしていて、さらに社員に発信するようにしていました。みんなに伝えることで責任も生まれ、蓄積することで自身の成長がよく見えるということです。

<第二部> 秋山 ゆかり 氏
組織全体を巻き込んだ働き方改革の実践ステップ

なぜ「働き方改革」を国が推奨しているのか

働き方改革セミナー_秋山氏

少子高齢化による労働力の減少が挙げられています。2014年の労働力人口が約6500万人だったのに対し、何も手を打たなければ、2030年には約5800万人に減少してしまうと予想されています。そこで国は、子育てをしている女性やシニア世代など、今働いていない人たちに働いてもらうことで、労働力を確保しようと考えています。また、その人たちが働きやすい環境を提供することもあわせて必要となっています。

今働いている人たちの離職対策も必要です。たとえば、ミレニアル世代は独立志向で一社に縛られない働き方をします。このような働く人の多様化に即した制度も求められています。
さらに、国の成長には生産性の向上も求められています。社員一人当たりの生産性は、先進7か国で最下位です。
このような背景から、国が働き方改革を推進し、労働力の確保と生産性の向上を試みているのです。

チームの生産性を上げる3つのポイント

企業が生産性向上を実現するには、自社の戦略に沿って、成果を生む時間を最大化し、時間当たりの成果を最大化することです。成果を生む時間は、長時間勤務では実現できません。スイートスポットと呼ばれる高い効果が出る時間は、週に30時間前後と言われています。その時間を効果的に使うことです。
そこで、生産性を上げる3つのポイントが紹介されました。

1

仕事の見える化をする

2

定期的にいらない仕事の削減をする

3

チームの生産性向上をできる人から学ぶ

仕事の見える化で、いらない業務をあぶり出す

自分たちがどのような時間の使い方をしているかを知らなければ、成果を生む時間を最大化できません。そこですべての仕事をリスト化し、それらの仕事を時間の種類に分けてみます。
仕事は“生み出す時間”、“投資の時間”、“処理する時間”、“ムダな時間”の「4つの時間」でできています。“生み出す時間”は、主業務の時間です。たとえば営業であれば、受注に至るまでの活動時間です。“投資の時間”は、会社・個人それぞれの将来の成長・成果に必要な投資です。たとえば、会社の将来に必要な投資には、新規事業のネタを探すなどが含まれます。

働き方改革セミナー_秋山氏

個人の投資には、グローバル化を見据え、語学力を磨くなどが入ります。業界・職務によりますが、業務時間の2割くらいを割くとよいでしょう。“処理する時間”は、絶対にやらなければビジネスが回らないが、売上に直接つながらないような業務です。たとえば、経費精算などが入ります。ITやアウトソーシングなどを活用し、積極的に効率化を目指すとよいです。“ムダな時間”は徹底的に減らしましょう。

時間の種類 概要
生み出す時間
  • 仕事で期待されている役割を遂行する時間

投資の時間
  • 将来の成果・成長に繋がる時間

  • イノベーションを期待する場合は、生み出す時間の20%くらい持てるのが理想

  • 目的を明確にしないと、ムダな時間になる

処理する時間
  • 経費精算などの絶対にしなければビジネスが回らないが何かを生み出しているわけではない時間

ムダな時間
  • 結果に結びつかない時間

  • 積極的に減らしていく

チーム全体で仕事を棚卸しすると、会社の戦略に沿った時間の使い方をしているのかどうかが見えてきます。どの仕事に注力し、どの仕事を削減するのか、どんな領域の仕事に新しく取り組んでいくべきかなど、自分たちで考え、議論し、変えていくきっかけになります。

時間当たりの成果を最大化する方法を学び合う

同じ仕事をしているのに、時間の使い方がうまく成果が出る人とそうでない人がいます。そのような場合には、時間当たりの成果を最大化するテクニックを、チーム内で教え合える場を作りましょう。できるメンバーから、どうやっているのか、何がポイントなのか、細かく丁寧に秘伝を伝授してもらうのです。また、チームに共有しやすくするために、共有した人にプラスになるような人事評価もあらかじめ考えておく必要があります。

このように、仕事の見える化をし、いらない仕事を切っていきながら、効率よく仕事をする方法を学び合う職場に変えようとすると、変化を拒む人も出てきます。
変わることをリスクと捉えて拒否する人に対しては、時間をかけて相手の脅威ではないことを伝えましょう。そして、不用意な試行錯誤をしないように、小さなプロジェクトで検証してから実施をしていくことです。受け入れてもらうためには、コミュニケーションが重要です。一気に変えるのではなく、時間をかけて変わっていく方法も検討する必要があります。

<セミナー開催:2018年2月14日(水)>

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