冠婚葬祭で身についた、とある癖

今回の拙文寄稿は全7篇にて一応終了とし、ひとまず「肩の荷」をおろした感に浸っておりました。ところで、筆をおいた後に念のため拙文を読み返してみますと、ついつい書き忘れてしまった事柄が意外に多いのにも気がつきました。つきましては、「その8」以降は、時系列は度外視して「ある出来事」をトッピクス的に逐一ご紹介してみたいと思います。駄文をさらに書き散らすことは甚だお恥ずかしい次第ですが、何卒海容ください。

冠婚葬祭での体験

「冠婚葬祭をきちんと仕切れないようでは商社マンは失格」とよく言われたものでした。「冠婚」の「結婚式」。披露宴での「司会者」の上手・下手でパーティー自体の雰囲気が左右されてしまう例は皆様よくご存知の通り。高校・大学で応援指導部に所属した私は大勢の人達の前で喋ることには慣れており、緊張したりあがったりすることはほとんどありませんでした。そのためか、仲間達の披露宴での司会役を度々引き受けました。おかげさまで私の司会者ぶりはまずまず好評だったようで、関係各位からはお世辞抜きで「名司会者」などと称賛され気分を良くしたものです。この種の評判は社内にも広がり何かとメリットがありました。

ところで、「葬祭」の「葬式」の場合は話が大分変わってまいります。葬儀社と言うプロがおりますので、素人の我々はあまりしゃしゃり出ないほうが良く、プロに任せて「裏方」にまわっていたほうが賢明です。私自身も社内外関係者の葬儀のお手伝いには随分狩り出されましたが、極力目立たないように心掛けました。それでも、時々葬儀社の社員に間違わられ、弔問客から「明日の出棺は何時ですか」などと不意に尋ねられまごついたこともありました。今回申し上げたいのは、上役などの代理で葬儀に行った際に心得ておくべき事柄です。某日、私は上司のセメント部長の代理である取引先の通夜に出向くよう命じられました。部長名の香典と名刺を携行し葬場に赴き、遺影に拝礼、焼香、遺族に挨拶などの務めを滞りなく果たし退出。翌朝出社し、早速部長に昨晩の報告をしました。以下は部長と私とのやりとりの要旨です。

部長「ご苦労さま。ところで私名義の生花はあったかい」
私「もちろん、ございました」
部長「どの辺の位置にあったかね」
私「上から「二段目の向かって左側中ほどだったと思います」
部長「○○商事(注;同業者)セメント部長の生花の位置は確かめたか」
私「○○商事の生花もあったとは思いますが、はっきりとは確かめませんでした」

このあと、せっかく貴重な時間を割いて通夜に参列したのだから、漫然と焼香するだけでなく、同業他社代表の生花の有無・飾り付け位置くらいは必ず銘記しておくべしと懇々と諭されたことを40年近くたった現在でも記憶しております。以来、私は葬儀祭壇での生花の位置や供花者名には人一倍注意する癖がついたようです。

※本記事は匿名とさせていただきます。