昨今の商社ビジネス

商社ビジネスは外からはなかなか解りにくい部分があります。 私自身も伊藤忠商事で18年近いキャリアを重ねていますが、会社のビジネスを網羅的に話すことは、きっとこれからもできないでしょう。よく商社の取り扱う商材が広範囲にわたることが解りにくい原因として挙げられますが、昨今はそればかりでは無いと感じています。

商社ビジネスを語る場合「1.トレード(貿易)」「2.ファイナンス(投資)」そして「3.マネジメント(経営)」の3つの要素に整理することが可能です。かつ、ビジネスの目的はすべからく「お客様やパートナー企業様が儲かるためのサポートをする」ことに集約されますので、ある意味シンプルです。

参考までにこれら3つの要素を簡単に説明します。

1

トレード(貿易):

良い製品を持っているのに、海外もしくは国内に販路を持たない企業様に対し販路拡大をサポートします。従来の商社のイメージに近い部分です。

2

ファイナンス(投資):

成長のポテンシャルはあるものの、布石を打つ資金に余裕が無い企業様に代わり資金負担を請け負います。投資銀行やファンドなどと近いと思われがちですが、将来の事業化を見据えた長期的サポートを行います。

3

マネジメント(経営):

事業会社管理・経営などを通して培われるプロジェクト推進力・経営力・管理能力を利用して、成長を加速化したい企業様向けにマネジメント人材を派遣します。コンサルティングとも少し近いですが、同じ釜の飯を食って実行まで共にする部分で根本的に異なります。

おおむねどの分野のビジネスにおいても、上記の3つの要素(時として武器)を携えてお客様やパートナー企業様の収益が上がるよう日々邁進しています。話を戻して、なぜ商社ビジネスが解りにくいのか、その理由は2つの変化にヒントがあると思います。

1つ目は取り組むビジネスの規模が巨大化しているためです。ビジネスの規模が巨大化すると社会に対するインパクトが大きくなり、当然、秘密裏に進めるケースが多くなります。プロジェクト名には暗号が使われ、社内でも関係者以外が知ることはできません。壮大なビジネスを何年にもわたるプロジェクトとして推進する取り組みが増えています。

2つ目は注力する分野や市場を刻々と変化させているからです。つい数年前まで商社=エネルギー・資源の会社と思っていた方も多いと思いますが、例えば伊藤忠商事は生活消費分野を中心とする非資源分野へ舵を切っています。また、取り組む地域(国)も変わってきております。個人的見解ではありますが、これからは「華僑」ならぬ「印僑(世界で活躍するインド系の皆さま)」が作る経済圏にも注目が集まると思います。

商社の仕事は前例の無い取り組みを自らの思考で突破していくチャレンジの連続です。失敗も多いですし、短期的な成果はなかなか得られません。製造業では無いのでモノも作れません。マドルスルー(Muddle Through)と言われるように、泥の中をがむしゃらに進むようなものです。時として辛いものがあります。

ただし、その成果として私たちは未来の社会を作ることができます。こんな醍醐味のある仕事は他にあるでしょうか。高い志を携えた商社ビジネスは、これからも益々需要が増えてくると確信しています。

伊藤忠商事 情報・保険・物流部門:満岡 明弘